福間香奈女流六冠、記者会見(質疑応答 書き起こし)

2025年12月10日午前におこなわれた、福間香奈女流六冠による記者会見での、質疑応答を書き起こしました。
松本博文 2025.12.17
誰でも

2025年12月10日、女流将棋界の第一人者である福間香奈女流六冠(33歳)は記者会見をおこなった。冒頭の発言については、こちらをご覧いただきたい。

この記者会見を受けて日本将棋連盟は同日12月10日に以下の文書を発表した。

また12月16日、日本将棋連盟は福間女流六冠の主張を大幅に認める形で、以下の文書を発表した。

本稿では12月10日の記者会見における、質疑応答をまとめた。

※質問記者の名のり、最初のあいさつ、記者会見開催への感謝の言葉などは省略した個所あり。

福間香奈女流六冠記者会見、質疑応答

中日新聞記者「中日新聞をはじめとする地方紙各紙は、女流王位戦の主催者です。女流王位戦がいま現在この・・・。ちょっと言い方難しいですけど『妊娠規定』が入ってきますけども。『妊娠規定』は採用しておりません。その件について福間さん、並びに弁護士の先生がどのようにお考えかを教えてください」

福間香奈女流六冠「女流王位戦は、私が(2024年の)妊娠時、特につわりがひどいときに、並行しておこなっていただいたタイトル戦で。当時は本当に細かいところまでお気遣いいただいたことにより、戦い抜くことができました。本当にありがとうございます。またその後の、現行の4月に運用されている規定が、女流王位戦は保留にしていただき、対応していただいておりますことを、本当に感謝しておりますし、またこれからも協議していただている現状に大変ありがたく思っております」

編注:編注:女流王位戦は北海道新聞、東京新聞、中日新聞、神戸新聞、徳島新聞、西日本新聞、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会が主催する棋戦。2024年、福間女流王位(当時32歳)は五番勝負で加藤桃子女流四段(当時29歳)の挑戦をしりぞけて防衛を果たし、五冠を堅持した。(2025年12月現在は六冠)

中日新聞記者「先生からもお願いします」

松田真紀弁護士「いろいろなお考えがあって、いろんな運用をされているスポンサーの方々がいらっしゃると思います。われわれの思いっていうのが、同じ気持ちでまとめていただいているのかなと思うと、私たちとしても、権利について非常に配慮していただいているのかな、というふうに感じるところです。こういったところで、さらなる議論というのが発展していったらいいなというふうにも思っておりますので。今後とも引き続きどうぞ、応援のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございます」

朝日新聞記者「事実関係でちょっと教えていただきたいんですけれども。この『要望書兼ご提案書』なんですけれども。12月9日付ですけれども。実際に発送されたのはいつですか? 連盟にはもう届いてるんでしょうか」

松田弁護士「はい。先日(12月9日)の午前中に投函させていただいておりまして。今日(12月10日)ちょっと、記者会見朝だったっていうこともありましたので、朝一で。この(記者会見を)開く前にも、FAXの方を連盟の方にはさせていただいております。文書の方は郵送で送らせていただきました」

朝日新聞記者「ではまだ連盟さんから、打ち返しというんですか。『こうします』『こう対応していきます』というようなお返事はまだ、ということでしょうか?」

松田弁護士「はい、その通りです」

朝日新聞記者「あと、福間さんにおうかがいしたいんですけれども。一部報道などもありまして、ニュースにはもう既になっていたと思うんです。それを受けて記者会見ということですけれども。ご覧になった方から、感想というんですかね。声みたいなものは寄せられてますか。差し支えなければでけっこうですけど、棋士とか、女流棋士の方から、声がもし寄せられているようで、しゃべられるということができるようでしたら、お教えください」

福間女流六冠「何名かの女流棋士の方々には、私の方からお伝えしていましたので。それに応(こた)えるような形で連絡をいただきました。連盟にこの要望書を提出する前に、自分なりにちょっと動いてはいたんですけれども。その際に、いろんな立場の女流棋士の方のご意見も求める機会も設けまして。そういう接点があった方々など『こういう形で記者会見する運びとなりました』っていうことをお伝えしたという感じです」

朝日新聞記者「女流棋士の仲間には事前に、こういうことで、という説明をされて、意見も求め、というような」

福間女流六冠「いや、直前で、はい」

朝日新聞記者「ありがとうございます。あの、体調大丈夫ですか?」

福間女流六冠「体調、はい。治します(笑)」

朝日新聞記者「こんな声の福間さんは初めて私は見た気がするんですけど」

福間女流六冠「体調自体は大丈夫です。ちょっと声だけが・・・(苦笑)」

フリー記者「要望書を(2025年)1月でしたっけ。(2024年)12月でしたっけ。要望書を送られたということだと思うんですけど。それがまったく反映されていないものが出てきた、ということで。要望書の中に『洋服や椅子での対局を可能にしてください』っていうものとかもあると思うんですけど。このあたりもまったく対応されていないということなんでしょうか? 要望書の中で対応されているものがまったくないのか。あるものもあるのかをお聞かせください」

(編注:現在の公式戦の対局では基本的に畳の上に座って指すことが多い。またタイトル戦(番勝負)では、和服を着ることが義務づけられている棋戦もある。身体が不調の対局者はそうしたことを負担と感じ、椅子に座った上での対局や、洋服での対局を望む場合もある)

福間女流六冠「『椅子の対局を可能にする』っていう明記があったかどうかはちょっと・・・。私としてはそこも規定に組み込んでほしいということで要望したんですけれども。明確なことについては、なかったような気がします」

松田弁護士「たしか、なかったですね」「福間さんが去年(2024年)の年末にですね。あげさせていただいた要望書っていうのは、窓口の明確化であったりとか、体調すぐれないときの洋服や椅子での対局などの環境整備で。日程の変更を可能にすること、っていうのを要望に出していたんですけれども。基本的には規定にしていただきたい、っていうことに対する要望でしたので。あとこういったものが明文化されているっていうのは、私たちの方では確認ができていないという状況です」

NHK記者「経緯に関する事務的な確認が一点と。あと、もう一つ福間さんにおうかがいしたいんですけど。まず一点、事務的な確認で。妊娠・出産の規定がこれまでなかったということなんですけれども。12月に規定改定について意見を求められたというふうに(配布資料の)2ページ目、あるんですけれども。これはやはり福間さんがご経験されたことをきっかけに、新たにこうした規定ができたというようなことでよろしいでしょうか」

松田弁護士「私たちとしても今回の4月の規定ができる経緯っていうのが、なにがきっかけだったのか、っていうのはちょっと把握はできておりませんで。『こういうことがあったから作るね』っていうことは、別に言われたわけではなかったんですが。去年(2024年)ないっていうことで、いろいろとさまざま、大変だったっていうことから、今年(2025年)の春に作られたのかなっていうふうには推測はしているところです」

NHK記者「わかりました。ありがとうございます。もう一点お尋ねしたいんですけど。今回、規定についてですね、投げかけられたわけなんですけれども。将棋の世界以外に関しても、お伝えしたい部分ももしかしたらあるのかな、というふうに。影響を与えたいこともあるのかな、と思ったんですけれども。もしそういったお気持ちがあれば、お答えいただけますでしょうか。あればで大丈夫です」

福間女流六冠「そうですね。今回、妊娠・出産して感じたこととしましては、やはり、私でいうと将棋にあたる部分ですけども。仕事と妊娠・出産を両立できるような社会になっていただけたらな、というふうに思っています」

読売新聞記者「いろいろ取材してる中で、福間先生もいろいろ個人的に動かれて。産休委員会ですね。そういったいうことで、女流棋士の方に意見をうかがったりとか。動かれてたということで聞いてるんですけど。今回、要望しなければならないと思った時期といいますか、きっかけっていうか、というのはもしありましたら、教えていただけますでしょうか」

松田弁護士「産休委員等の動きもあるというか。そもそもこれは、福間さんがそういった必要性があると思って呼びかけになった、というふうにわれわれはうかがっておりまして。ただ、産休制度委員っていう委員会の趣旨というのが、産前6週、産後8週で対局者が変更したときの保障といいますか。そうした場合の、あとの取り扱いをどうするかっていうことをメインで決める委員会だっていうふうに位置づけられましたので。福間さんのご趣旨としては、もともと呼び掛けたときの、自分の考えと趣旨がやっぱりちょっとずれがあるっていうところで。ちょっとあきらめた、という経緯がありまして。その後も各関係者にいろいろこう『こういった規定ってどうなんですか』とか、いうところは彼女も一生懸命あっちこっちに聞いて回ったりとか。お声掛けしたりとか。協力を求めたりしたんですけれども。なかなかこう、棋戦もあって。すごくお子さんもお小さいですから。そこに行き詰まりっていうか、やっぱり大変さを感じられて、私(わたくし)のところにご相談にこられたというところになりますね」

読売新聞記者「何月ぐらいでしょうか?」

松田弁護士「当方のほうにご相談来られたのは夏でした」

神戸新聞記者「当時、福間先生からのお言葉もあって、要望されていたのに、反映がなく、4月にこういった規定が来たということで。すごい絶望されたお気持ちっていうのが、すごい伝わってきましたので、今回のご提案に結びつけるかと思うんですが。そして、連盟側との対立を望むものでないという趣旨もあった。ところが、この段階で言うのはちょっとあれなんですが、お互いの主張があって、もしも要望がうまく通らないとか、まったく反映がされないっていう。これまでの状況と変わらない様子が続いた場合、これはなにかまた別の法的措置とかっていうことは考えられているか。先生のお考えをうかがえれば」

松田弁護士「まずは問題提議というところをさせていただいて、議論が活発化することをわれわれとしては望んでおります。要望を突き通すっていう趣旨ではないというところも、今日の記者会見通じて、皆さまに伝わったのではないかと思っております。その後のことについては、やはり議論や協議、あるいは皆さまのご意見やいろんな、逆にファンの方々からの要望というものもあるかと思いますので。そういったもの(法的措置などは)っていうのは現時点では、ちょっとすみません、想定もしておりませんし、想像もしてなかったです」

記者(所属聞き取れず)「2点確認ありまして。1点は経緯のところで、不戦敗となった対局もあったというところが、念のため、いつどの対局かをうかがってよろしいでしょうか」

松田弁護士「こちらについては広く報道もされてるかと思うんですけれども。去年(2024年)であればまず夏の白玲戦(七番勝負)が1個と」

松田弁護士「そのあとは女流王将戦(三番勝負)になります。この2つが去年のその時期に不戦敗となったものになります」

記者「ありがとうございます。もう1点ありまして、この規定をどのように見直すことを望むか。いくらか記載もいただいていて、口頭でもご説明いただいてるんですが。素人目に、ちょっと追いつかないところがありますし。特に福間さんが先ほど説明された部分はちょっと正直、けっこうわからなくって。そこはご解説がなくてもいいんですけれども。これは要するに、産前6週と産後8週、かなり長い期間ですので、かぶってくるところをまるまる日程を変えようと思うと、もう物理的にまず不可能っていう状況で。ただ、いま現状はそもそも、日程調整というよりは、対局者をまず変更するっていうところをまず変えないといけないし。日程変更するとなっても、かぶりすぎてるので、もう少し柔軟に出れる一部分、出れるところは出て、みたいな柔軟な対応を求めるっていうことなんでしょうか」

松田弁護士「はい、その点なんですけれども。やはりこうしたタイトル戦の組み方であったりとかいうのは、そこをすべて日程変更するとなって、翌期の取り扱いとするのかとか。一部日程変更して、その保障をどうするのかとか。そういったものについては、たぶん、『これ絶対』ってやったあと『じゃあこれね』ってやると、おそらくそこのひずみがあったりとか、いろんな調整が大変なんだろうっていうところですので。有機的にわれわれとしては、こういった規定、こういった方法があるんじゃないでしょうか、とかっていう形でいくつも提案してるんですけれど。総合的に勘案して。あるいはいちばんいい方法っていうのを、識者をまじえて協議されたらいいのかな、というふうなところは思っております。『これは絶対こうだ』っていうわけではないんですけれども。ひとつ、こちらは提案というか。『こういったこと、こういう方法があるんじゃないでしょうか』っていう形で、いろいろ提案させていただいてるところです」

記者「現状は日程調整の余地なく、というか、もうかぶってる時点で対局者が即座に変わるっていうところが、いちばん問題点いうところでしょうか」

松田弁護士「はい。いま現状であると、もう本当に、硬直的に読めてしまう規定になっておりまして。本当に妊娠・出産の。産前産後の14週は、タイトル戦でまず参加できないっていう規定がもう、まず最初に、頭にありますので。まずそこはちょっと、それをどうするかっていうことについては、今後話し合いが必要なのかな、というか。規定の策定、必要なのかなと思うんですが。いまもそうなっているっていうのは、いったんおいといてほしい。保留してほしい。停止してほしい。ということになります」

記者「わかりました。ありがとうございます」

福間女流六冠「まず現規定をストップしていただいて。あとはやっぱり妊娠したときに、いまの地位から事実上降格することなく、その地位の保障されることを願ってます。日程変更をしていただくっていうのも、ものすごくやはり多くの方々が携わっていただいてるので。ものすごく大変なことは理解していますので。休むのであれば、その地位がそのまま保障されるような形で。臨機応変に変更できるんであれば変更していくという形で、考えていただけたらと思っています」

フリー記者「ちょっと基本的なことをうかがいます。先ほど、中日新聞の方が『自分のところで(女流王位戦を)主催していたのでは、そういうことがない』っていうことだったんですけど。これはタイトル戦の主催者によって変わっていくということなんですか? タイトル戦によって対応が違うというのは、どうしてなのかなと思います」

福間女流六冠「私の知る限りなんですけど。日本将棋連盟と主催の方(かた)は、個々に契約されてるっていうのをお聞きしてますので。その都度、その棋戦によって、対応が違ってくるのかなという認識ではあります」

フリー記者「一応、今回の要望の相手は連盟ですけれども。そういうことであれば、そういう主催者とも相談してほしいというようなことをやっぱり」

福間女流六冠「そうですね。お願いできればと思います」

フリー記者「いま会長さん(日本将棋連盟会長:清水市代女流七段)も女流棋士ですけど。以前も女流棋士の方(かた)で、タイトル戦ではなかったんですか? そういう出産とかにぶつかっちゃって」

福間女流六冠「以前そういうケースもあったんですけども。そのときは棋戦が4大タイトル棋戦でしたので。いまは8大タイトル棋戦ということで、けっこう日程が過密日程になっていて。休暇がないという状況ではあります」

フリー記者「以前の方で、そういうことで苦しんだ女流棋士さんはあまりいなかったという」

福間女流六冠「実際にはすごく大変だったとは思うんですけど。状況は少し、切迫しているのかなと思います」

フリー記者「あとタイトル戦(番勝負)以外の、タイトル戦までいかない普通の棋戦のときは、どうなのかしら」

福間女流六冠「それは、そうですね。私もそうですけど、妊娠・出産された方々のお話を聞くと、不戦敗になったケースがほとんどでしたので。そのことも含めまして、今回、私だけの問題じゃないということで、ここに至りました」

毎日新聞記者「もしかしたら前の質問が出てるかもしれなくて、重複になったらごめんなさい。産休、育休で休業することになった棋士への地位保障の件の中で、対局者の変更が、挑戦者が変更になって、タイトル保持者はそのままという場合でも、暫定王者戦にするということですか、これは」

松田弁護士「すみません、もう一度お願いします」

毎日新聞記者「地位保障のところでですね。『妊娠・出産する女流棋士による対局者変更がやむを得ない場合、暫定王者制度を設ける』と。『対局者変更が生じた今期は一般棋戦扱いとしてその期のみの優勝者を決め、翌期からは通常通り対局者変更となった女流棋士が復帰する』とあるんですが。この場合、挑戦者の方(かた)が妊娠で出られなくなって変更になった。タイトル保持者はそのままと、そういうケースでも」

福間女流六冠「(資料記載の)上のところに『タイトル保持者である場合と、挑戦者の場合の扱いを分けて検討する』ってあると思うんですけど。そこはちょっと分けて考えるべきことかなというふうに思います」

毎日新聞記者「そうすると、その場合はタイトル戦としてやるという?」

福間女流六冠「いや、そのあたりもちょっとまだ、要望段階なので。やはりちょっと、タイトル保持者と挑戦者の心情というか。やっぱり1年間守り抜いてタイトル保持者としての地位があるので。そのあたりはやはり別として考える必要があるのかなと」

毎日新聞記者「それも含めて検討してください、ということですね」

福間女流六冠「はい」

関西テレビ記者「この要望が、女流棋士業界全体の発展に向けてのご意見ということも理解した上で、質問をさせていただきます。これまで将棋に注目されてなかった方も、このニュースに注目する可能性もありますので、質問させていただくんですけども。タイトルを防衛することであったりとか。もしくはタイトルを獲得すること。それが、どういった意味があって、どれぐらいの重みがあるのかということを福間さんからおうかがいしたいです」

福間女流六冠「女流棋士になる前から、やはり平均して、どれぐらいですかね。幼稚園ぐらいから皆さん将棋を始めて。女流棋士となって、頂点を目指して対局しているわけなんですけれども。その中でやはり、タイトル戦というのは特別なもので。本当にすべてを懸けて戦っていますので。そこで対局するということは、私自身、本当、なににも代えがたいことではあります。本当にすべて力を尽くして戦っていますので。なんと表現していいのかわからないんですけれども。本当に、私自身でいうと、将棋がすべてということもあって。妊娠・出産した際にも、そういう権利を維持して、対局を戦い抜きたいという気持ちがあります」

関西テレビ記者「それに関連してもう1問うかがいたいんですけれども。タイトル戦、挑戦者として臨む場合には、そのタイトル戦の数日だけではなく、もっと前からいろいろあると思うんですけども。どれぐらいの長さをかけて戦って、挑戦者というポジションになって、その上で今回、妊娠・出産など、そういったものが重なってしまうと、戦わずして、事実上の不戦敗でタイトル獲得のチャンスをあきらめてしまう。そういったことを、その期間の長さも含めて、思いも含めて、教えていただいてもいいですか」

福間女流六冠「1年かけて、タイトル戦を目指して対局していくんですけれども。過去にも、私以外にそういうケースがありまして。挑戦者決定戦、妊娠した時点で対局できなくて。タイトル戦を目指すこと自体をあきらめざるを得ないケースがありましたので。本当に頂点を目指してやっている中で、対局することをあきらめざるを得ないっていうところは、本当になににも代え難い。不戦敗というその、戦わずして負けるということは、本当に言葉では言い表せないような、苦しさや無念さみたいなようなものがあると思います」

(編注:2024年の倉敷藤花戦において、室谷由紀女流三段はトーナメントを勝ち上がり挑戦者決定戦にまで進んだものの、産休により不戦敗となった)

松田弁護士「いまのご質問なんですけれども。毎期ですね、タイトル戦っていう期間が含まれているんですが。そのテーブルにつくにあたってはですね。予選、リーグ戦というか本戦(トーナメント)というのを次々、勝ち上がっていかなきゃいけない。それは何か月もかけておこなわれる。そういったものを勝ち抜いて、やっとタイトル戦にたどり着くというものでありまして。やはりタイトル戦っていうのは、いま福間さんが申し上げたように、非常に特別なもので位置づけられているものと、われわれは理解しております。やっぱりそういった権利を、やはり簡単に、って言いますか、妊娠・出産であきらめなきゃいけないということについて、今回ちょっと訴えさせていただくということになりました」

中日新聞記者「本日は非常に勇気のある会見だったと思います。ありがとうございます。この(配布資料の)書面を読みますと、4月に連盟のほうから規定が配られてからも、福間さんの方から連盟に向けていろいろな意見の呼びかけであったり、問い合わせ、あるいは要望みたいなものがあったと読み取れるんですけれども。具体的にどのような働きかけをしてきたのでしょうか?」

福間女流六冠「先ほどお伝えしたこともあるんですけれども。いろんな立場の女流棋士の方々がいらっしゃいますので。そういった方々の意見をいただいて、一緒に考えていただいたり。個人的には(日本将棋連盟の)理事の先生と直接お話しして、思いを伝えさせていただいたり。女流棋戦に関わっていただいてる関係者の皆さまとお話しさせていただいたりという。ちょっと証拠には残ってないんですけれども。実際にお話しして、意見をいただいたり、お伝えしたりといったところです」

中日新聞記者「そういったことに関して連盟側からですね、なにか具体的な回答みたいなものがあったんでしょうか」

福間女流六冠「まずは女流棋士の意見を集めることが必要ということで。この規定についてちょっと保留できない。4月からずっと運用されている形なんですけれども。なかなかこう・・・。連盟側としても、日程変更含め調整が、ものすごく大変ということはおっしゃられていました。そこは私もすごく理解しているところではあります」

中日新聞記者「そういった中で一連の連盟の対応について。連盟に対してどのような思いを持っていらっしゃるのか教えていただきたいです」

福間女流六冠「そうですね。なかなか日本将棋連盟という組織に対して、個人から要望をお伝えすることは、かなり、やはり難しいことだなということを実感しました。でも、過去の経緯とか、いろいろありましたけれども。私としましては、過去のことよりも、未来のことが大事だと考えていますので。いまいる女流棋士。私含め女流棋士や、これから女流棋士を目指す女の子たちが安心して頂点を目指せる将棋界であってほしいな、というふうな思いがあります」

中日新聞記者「最後にもう一つだけ。今回、こうやってご自身が表に出てきて。たぶん矢面に立つという意味で、非常に勇気のある行動だったと思います。ただ、こうやってご自身が表に立って、周りを巻き込んで社会を動かさないと、連盟も動いてくれないんではないかとか。そういった思いはありますか」

福間女流六冠「そうですね。私自身、あまり表に立つことが得意ではないので(苦笑)。緊張もしているんですけど。やはり誰かがこう・・・。伝えないと、伝わらないことがあるのかなというふうに感じましたので。こうして弁護士の先生にお願いして。もう本当にこのようにたくさんの報道の方々に来ていただいたことに対して、本当に感謝しております」

産経新聞記者「先ほど弁護士の方(かた)から提訴など、特に考えてないというお話しをされていましたけど。福間さんご自身は今後どうなってほしいというところと。それから法的措置とか、そういったところについてはどうお考えでしょうか?」

松田弁護士「福間さんの代理人として、先ほどの回答でしたので。基本的には同じ考えなんです。同じこと言っていただきましょうか?(笑)ちょっと、お声がちょっとね。つらそうなので。繰り返しになるんですけれども。あくまでもこれを、要するに議論の活発化につながればいいかな、っていう思いで。彼女自身も別にそういったことを、私(わたくし)には相談されておりませんでしたし。そういう『通らないから、ああしよう、こうしよう』っていう、例えば訴訟とか、そういったことは彼女自身も考えておりません」

神戸新聞記者「ちょっと重複しちゃうかもしれません。すみません、今後の報道のためにうかがっておきます。昨年(2024年)12月の要望書。この中には『担当窓口の明確化、対局環境および対局日程の配慮等についてお願いしました』と。もうちょっとだけ詳しく内容をうかがってもよろしいですか」

松田弁護士「あくまでも去年の段階でして。本当に出産直後というか、その時のものですので。いまのものとはまたちょっと違いますもんね」

福間女流六冠「はい。細かいところは」

神戸新聞記者「大まかには、担当窓口明確にしてくださいとか、洋服の件とか、椅子対局とか、指しやすい環境にしてくださいね、みたいなところとか」

福間女流六冠「そうですね。細かいことをいえば、たくさんあるんですけれども。やはり洋服や椅子対局ということと、先ほど言った担当窓口。あとは、ちょっと時期によってもあれなんですけど、日程変更・・・。これはちょっと、この当時のものなので、そこは違うんですけど。あとはほかのタイトル戦(番勝負)ではなく(挑戦者を争う)予選、本戦の段階で、いまの段階ですと、けっこう不戦敗になっているケースが多いので。そこをやはり柔軟に日程変更、場所変更をしていただきたい、っていうところです」

神戸新聞記者「これ(当時の要望書)があったんだけれども、具体的には正式な返答がないまま、すっ飛ばして4月に連盟から規定がぽっと出てきたんで、今回のことに至ってるわけですね。その要望書にはほぼ無回答なわけですね、連盟さんは」

福間女流六冠「そうですね。回答する義務というか、ないのかもしれないんですけど。一女流棋士としては、いきなりこう、現規定がメールで送られてきたような形でしたので。そこに驚きはあった、というところはあります」

神戸新聞記者「具体的には若干、復帰されたあとも、対局いつにするとか、一部ちょっと通ってることもあるんでしょうか。この12月の要望に関しては」

福間女流六冠「ただ、これはまだ規定としては入ってないことだと思いますので。実際にその前例としては、私の前例もあるんですけど。規定としてはないのかなと思います」

神戸新聞記者「この要望書に対して、連盟さんがどんな対応されるかちょっとわからないんですが。今後の報道対応で考えてることって、節目でこんなこと考えてるとか、ありますか」

松田弁護士「要望書のほうには、途中経過は、どう取り扱われるというか、この規定について、もしなにか動きあるんであれば、途中経過でもいいので教えてください、みたいなことを、1か月をめどに、という形で出させていただいてたかと思うんですけれども。1か月ぐらい、ちょっと私も(日本将棋連盟の)繁忙期とかよくわからないんですけど、くらいにおうかがいしてみたいな、とは考えてはおります」

神戸新聞記者「本当にこれ、暫定王者に関する事務的な話なので、どちらにお答えいただいてもいいんですけれども。仮に福間さんがタイトル持って、弊社で主催させていただいている女流王位戦の場合に、妊娠・出産が重なった場合は、福間さんは女流王位として1年を過ごされて、そのときの暫定王者を1回決められて、翌年また福間さんが女流王位として復帰されて、挑戦者を迎え撃つという、そういう想定でよろしいでしょうか?」

福間女流六冠「私が暫定王者として、仮に来期、私が(タイトルを)持っていて妊娠したとします。そしたら、そこでは私が暫定王者扱いとなって、その期は、挑戦者決定戦が事実上のタイトル戦となって。それは一般棋戦扱いというのかわからないんですけど、1回限りの優勝者。そこでその優勝者の翌期の取り扱いは、保障面は検討する余地もあると思うんですけど。また来期は私が復帰して、他の女流棋士の方が現行ルールと同じような形で挑戦者を決めるといった、ちょっとシステム上、変更のような形にはなるんですけど。ただタイトル戦をおこなうという点に関しては、日程変更が必要ないのかなというふうに感じています」

朝日新聞記者「ファンの方は、棋士編入試験へ影響がないか心配されてる方、たくさんいらっしゃると思います。そのあたりいかがですか」

福間女流六冠「まったく問題はないです(笑)」

編注:福間女流六冠は一般公式戦において男性の棋士を相手に好成績をあげ、2026年1月から自身2度目の棋士編入試験(五番勝負)に挑む。

関西テレビ記者「私(わたくし)将棋のことはあまり詳しくなくて、的外れな質問をしていただいて申し訳ないんですが。将棋というと、ご高齢の方も楽しまれている印象があったので、そういった長く全盛期でいられるイメージがあったのですが。少し調べて拝見したところ、三十代前後、ちょうど出産や妊娠を考えるタイミングでピークを迎えるということが多いということを、非常に重なるな、という印象を受けたんですが、そのあたりのご自身のピークも含めて、やっぱりそういった時期に『キャリアをあきらめたくない』ですとか、そういった思い。先ほどの将棋への思いにも通じてしまうと思うんですが。これからの未来の将棋界のためにも向けて、そういったピークでもしっかり活躍できるようにという思いっていうのは、あったりはしますか」

福間女流六冠「はい。本当にまさにその通りで。キャリアのピークと、妊娠・出産の適齢期がかぶってしまっている点が、非常に難しいところで。やはり仕事の、私でいうと将棋の対局にあたるんですけど。対局と妊娠・出産。子供を望むことを両立できるような。どちらか一方をあきらめなくてよい将棋界になってもらえたらな、っていうのは。やはりその背景には、将棋の対局、一局戦うにあたって、タイトル戦だけではなく、予選の対局も同じようにすべてをかけて対局してますので。その点は・・・。そうですね。どんな状況下になっても、対局できるような環境であってほしいな、という思いがあります」

関西テレビ記者「のどの調子がすぐれない中、ありがとうございます」

松田弁護士「質問、以上でしょうか。はい。ありがとうございます。今後ですね、福間さんに対しても、さらにちょっといろいろお話し聞きたい、というご要望ももしかしたらあり得ることかな、というふうにも思っております。ただ、いま一方でですね。先ほどもちょっとご指摘ありましたように、来年棋士編入試験も始まりますし。今月も福間さん、対局何局か、複数控えております。なんといってもですね、いま、お小さいお子さんもいらっしゃる身でありますので。本件に関する質問とか取材は、こちらの弁護団。特に代表は私(わたくし)で窓口、務めさせていただきますので。連絡等、そういったものはこちらにいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。引き続き彼女の応援、よろしくお願いします。ありがとうございました」

(福間女流六冠、深く一礼)

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